教育目的プロダクトのプロダクトゴールをどう導くか
POの岡島です。
※ これは、「育てるAI検温(二期生版)」のプロダクトビジョン、および、プロダクトゴールを説明した文書です。今までメンバーに口頭で説明していたものを、これまでの経緯もふまえ整理しました。当然ハイコンテキストな読み物なのですが、世のScrumチームの何か役に立つ部分もあるかもと思い、ほぼそのまま、ブログエントリとして公開します。
まずは、FDPは今は二期生が活動中で、今から二期生は一期生と同様のビジョンで「育てるAI検温」というプロダクトを開発するんだ、ということだけ理解してもらえればうれしいです。PO視点でのFDPの説明については、以下エントリにあります。
育てるAI検温のプロダクトビジョン
プロダクトビジョン(コンセプト)は、一期生の時から今でも変えていません。すなわち、
「永和社員のフィードバックをもらいながらみんなで育てていくプロダクト」
です。(※ ちなみに、プロダクトビジョンについては、吉羽さんのRSGT2022発表資料 の12スライド目が分かりやすいです)
このビジョンを、一期生メンバーは、以下のように表現しています。まず、社内イベントでの発表資料スライドより。
画像だと見にくいですが、次のように書いてあります。
「名前は「育てるAI検温」といいます。永和の社員から採取した温度データから機械学習のモデルを作り、実際に使ってもらって予測結果と実際の体温をフィードバックしてもらい、そのデータをモデルに追加して改善していくというサイクルを回して、みんなでそだてようというコンセプトです」
次に、社員に実際に触ってもらうときに作った張り紙。
名前に込めた思いを社員向けに説明しています。
プロダクトビジョンの背景
このようなビジョンとした背景(Why)には、FDOの成り立ち、ミッションが根本にあります。以下はFDO(FDOは、FDPの活動母体の部署)のミッションです。(RSGT2022で岡島が使ったスライドより)。
これら3つのミッション実現に向けて、これまで活動を続けていることになります。当然、育てるAI検温のプロダクトビジョンは、これらミッションの達成に、総合的に寄与すると考えます(ここで「総合的に」という言葉を使ったのは、3つのミッションのどれかだけに寄与するものではないからです)。
それよりも、「永和社員のフィードバックをもらいながらみんなで育てていくプロダクト」
というプロダクトビジョンの作成にあたり、私は、FDOが経営計画の一部であることに重きを置きました。経営計画の一部であるということは、つまり、(Scurmでいうところの)ステークホルダーは、ESMの全社員であるということです。
POとして、私はステークホルダーを重視します。具体的には、全社員にFDOメンバーの活動に関心を持ってもらえることを重視します。これが、私がプロダクトに「育てるAI検温」と名付け、福井本社に実機を設置することでフィードバックをもらいやすくし、社員にに関心を持もらえそうなUI・機能を優先した理由です。
一期生バージョンのプロダクトゴール
実は、一期生バージョンの「育てるAI検温」のプロダクトゴールは明確ではありませんでした。プロダクトビジョンから直接落とし込んだものでもありません(※プロダクトゴールに関しても、先ほどの吉羽さんの資料や、長沢さんのRSGT2022発表資料がわかりやすいです)。
実際には、FDO活動の活動ゴールを転用しています。下図は、FDO一期生の各フェーズにおける活動ゴールで、「3Q+4Q」の部分が、育てるAI検温の開発時にあたります(※ 下図はRSGT2022発表時の資料です。Scrumの用語で説明するために「プロダクトゴール」と表記していますが、「活動ゴール」と読み替えたほうが分かりやすいですね)。
元々、一期生の活動まとめとして、ノウハウの形式知化は必要でした。それを育てるAI検温の開発を通じて実現したことになります。
結果的にですが、「永和社員のフィードバックをもらいながらみんなで育てていくプロダクト」というプロダクトビジョンを実現するためには、「機械学習プロジェクトを頭から最後まで通せるノウハウ、実践知を得て、それらを形式知化し社内に共有する」ことは必要でしたし、ビジネス向けプロダクトではなく、教育用プロダクトのゴールとして、妥当だったと考えています。
登場する概念や用語が多くなり分かりにくいかと思いますので、関係を図式化してみました。
一つ注意してほしいのは、この構造は、私がFDOを企画した時点で存在したものではないという点です。
もちろん、活動背景であるFDOのビジョンやミッションは当初からありました(今後も原則変わることはありません)が、各ビジョンやゴールとの関係性は、私の現時点での知識で表現し直したものですし、各活動やプロダクトのビジョン、ゴール内容については、活動を進めるなかでチームと共に固めていったものです。
二期生バージョンのプロダクトゴール
では、二期生バージョンの育てるAI検温のプロダクトゴールはどうあるべきでしょうか?
先ほど説明した通り、FDO活動におけるプロダクト開発はミッション(①プロダクト作りを技術力の根拠とする ②技術転換を促進する ③認知度向上に寄与)達成に向けた重要な手段であり、当然ながら、これらミッションの達成に寄与できることが一期同様の大前提となります。また、冒頭にも説明した通り、プロダクトビジョンは一期生バージョンと変わらず「永和社員のフィードバックをもらいながらみんなで育てていくプロダクト」です。
ただし、二期生は一期生とは状況が異なります。メンバーのスキルや価値観が異なるだけではなく、一年間の組織的な知識の蓄積があるのです。下図は、私がRSGT2022で発表した、FDO活動を通じて組織に知識を広めていくためのロードマップです。
今だ概念的なものではありますが、二期生は「形式知の連結」を期末時点での目標としています(これらの目標は「FDOとしての活動ビジョン」と言っても良いでしょう)。さらに少し具体に踏むこめば、目標は「一期生の成果+二期生の成果の連結統合」となるでしょう。
では、この目標達成に寄与できる、二期生版育てるAI検温のプロダクトゴールについて考えてみます。いくつか案があります(※ 今はゴールを簡易に書いていますが、実際にはもう少し具体化する必要があります)。
ゴール案1:「これまで学んだことを確認する」
成果の連結結合をするためには、まず、自分たちが何を学んだのかを認識するために実際に作ってみる必要があり、それを一期生の成果やプロセスと比較することで、自分たちやFDO全体としての課題がクリアになります。3案の中ではもっとも現実的なゴールです。
ゴール案2:「課題を解決しアップデートする」
案1を実現できることを前提に、さらに一期生の残した課題の解決を図ります。これは、直接的に一期生の成果(形式知)と、二期生のそれを統合することになります。
ゴール案3:「プロダクトとしてより良い性能を追及する」
一期生の得た知識に加え、自分たちの学んだことを連結し、さらに良い性能のプロダクトとします。ここでの性能とは、機械学習的な性能であり、(ある程度の)客観的な評価ができる必要があります。3案の中では最も野心的なゴールであり、案1・案2が達成できる事が前提となります。
POとしての判断
POとして、案2を選択します。案3も魅力的ではありますが、それは期末に最終的に達成できれば良いです(約2か月というチームが想定するプロダクトの開発期間も考慮に入っています)。まずは自分たちの学んだことを確認しつつ、一期の成果をアップデートすることで、ステークホルダである社員への共有を通じて、さらに巻き込んでいって欲しいです。
以上です。